九州新幹線開業を契機に、 地域経済活性化に大いに貢献

【経済界大賞】

唐池恒二氏(九州旅客鉄道社長)

唐池恒二氏(九州旅客鉄道社長)

 地元の悲願であった九州新幹線が全線開業するまさにその前日、東日本大震災という未曾有の災害が日本列島を直撃した。西日本に直接的な被害はなかったが、予定されていた祝典は中止となり、本来ならば、人々の大きな関心を集めたであろうビッグイベントは、すっかり新聞紙面の隅に追いやられた。
 その後もしばらくは社会全体の自粛ムードが続き、期待していた観光需要の盛り上がりにも水を差すこととなった。「観光都市九州」に向けて、ロケットスタートを切ろうとしていた九州旅客鉄道(JR九州)にとっては、手痛い打撃となった。
 そんな予想外の不運に見舞われながらも、5月以降は徐々に盛り返し、当初の目論みどおり、国内では関西や中国からの利用客を増やすとともに、韓国や中国からのインバウンドも着実に増加させてきた。これは、プロジェクトが単に「新幹線を走らせる」ことだけにとどまらず、それに付随するあらゆるサービスを、準備期間中にじっくりと練り上げてきた成果に他ならない。2011年度上期は売上高、営業利益とも前年度を上回り、通期でも増収増益を見込んでいる。
 約8年前からプロジェクトに携わってきた唐池恒二社長は、新幹線開業による波及効果を最大限に広げる方策を模索してきた。人の移動パターンの変化が、主力の鉄道事業のみならず、建設、不動産、流通といった、グループ内の他の事業にも好影響を与えることを見越して戦略を打ち立ててきた。それが、不測の事態にも簡単に揺るがない、足腰の強いプロジェクトを実現できた理由である。
 九州新幹線と並行して進めてきた新博多駅ビルの建設も、そうしたJR九州の姿勢が反映されたプロジェクトのひとつである。阪急百貨店や東急ハンズといった、全国的に知名度の高いテナントを誘致して、駅ビルそのものの魅力を高めるとともに、駅ビルを「箱」ではなく街の「一角」ととらえ、駅を拠点に人々を周辺地域に呼び込みやすい空間作りを行った。そこには、地域経済の活性化こそが、事業の持続的成長につながるという強い意識が感じられる。
 さらに、新幹線停車駅以外にも経済効果を波及させるために、停車駅から各地に観光列車を運行させるといった取り組みも行っている。中国からの観光客誘致のために設立した上海事務所によるPRも効果を発揮し始めており、現地からの団体客も着実に増加しているという。 閉塞感が漂う日本に、地方から元気を与える企業として、今後も同社の活躍に注目したい。

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